きちんとわかる巨大地震

●産業技術総合研究所 著 ●定価(本体1500円+税)  

スマトラ島、新潟沖…、巨大地震はいかにして起こるのか



2004年暮れに発生したM9.1のスマトラ島沖の地震は、
津波による犠牲者20万人と史上最悪となった。
阪神淡路大震災、新潟県中越地震の記憶も新しい。
「巨大地震」は、なぜ、どのようにして起こるのか。
そもそも地震は、どこまでわかっているのか。


産業技術総合研究所 著   著者紹介
きちんとわかる巨大地震   まえがき
     目次
     産総研ブックスについて
  
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2004年暮れに発生したM9.1のスマトラ島沖の地震は、
津波による犠牲者20万人と史上最悪となった。
阪神淡路大震災、新潟県中越地震の記憶も新しい。
「巨大地震」は、なぜ、どのようにして起こるのか。
そもそも地震は、どこまでわかっているのか。


  • 四六判  並製
  • 281ページ
  • 定価(本体1500円+税)

  • ■著者紹介

    第一部
    森山和道(もりやま・かずみち)

    第二部
    第一章
    佐竹健治(さたけ・けんじ)

    第二章
    小松原純子(こまつばら・じゅんこ)
    藤原治(ふじわら・おさむ)

    第三章
    宍倉正展(ししくら・まさのぶ)
    澤井祐紀(さわい・ゆうき
    小泉尚嗣(こいずみ・なおじ)

    第四章
    金田平太郎(かねだ・へいたろう
    桑原保人(くわはら・やすと)

    第五章
    堀川晴央(ほりかわ・はるお)


    ■目次




    はじめに 7 第一部 巨大地震の謎に挑む研究者たち ――語り手:佐竹健治、宍倉正展、藤原治                        小松原純子、小泉尚嗣、桑原保人                        金田平太郎、堀川晴央 津波から地震本体に迫る 18 余効変動――地面がジワジワ動くのが面白い 30 一〇〇〇年前の地層から数時間のイベントを読み解く 39 小さな堆積物から大きな動きを読む 48 地下水から地震予測に挑む 58 断層周辺の応力場を明らかにする 75 地形上に重ねられた地震の履歴を読む 86 破壊と伝播を計算し地震動を予測する 93 第二部 巨大地震の秘密に迫る 第一章 スマトラ島沖地震はなぜ起きたのか? 106 二〇〇四年スマトラ島沖大地震 106 日本を襲った巨大地震の津波 115 日本でも発生した巨大地震 120 第二章 日本列島周辺の海溝型地震 127 巨大地震は繰り返す 127 液状化の痕跡からわかる過去の巨大地震 134 津波堆積物からわかる過去の巨大地震 144 第三章 海溝型地震による地殻変動 155 巨大地震で海岸が隆起・沈降する 155 数十年にわたって変動する大地(一九六〇年チリ地震) 159 地層に残された地殻変動(北海道東部一七世紀の地震) 168 現在進行中の地殻変動(二〇〇四年スマトラ島沖地震) 177 繰り返し起こった過去の大地震を探る 184 地震予測のための地下水観測システム 191 第四章 内陸活断層による連動型大地震 205 活断層とは何か 205 活断層の活動履歴を復元する 211 内陸活断層による連動型大地震 216 活断層の連動予測に向けて 225 活断層深部の状態と地震予測 231 第五章 巨大地震の地震動 243 平野の地下構造と地震動 245 構造物のモデル化と応答スペクトル 253 観測点ごとに固有周期はあるのか?――大阪平野の例 258 伝播経路の影響 260 震源の影響 265 地震は「繰り返す」のか? 271 著者紹介 273 参考文献 281


    まえがき



    はじめに  二〇〇四年の暮れに発生したスマトラ島沖の地震は、実にマグニチュード九・一という
    凄まじい規模の巨大地震であった。津波による犠牲者も二〇万人と史上最悪となっ
    た。いっぽうで私たちは、一九九五年一月に阪神・淡路大震災を経験した。新潟県
    中越地震の記憶も新しい。東海地震も近づいていると言われる。このような大地震
    や巨大地震は、なぜ、どのようにして起こるのだろうか。それは、どこまでわかっ
    ているのだろうか。研究はどこまで進んでいるのだろうか。予測はできるのだろう
    か……。こうした疑問に答えようというのが本書の目的である。
     もちろん、地震の研究にはさまざまなアプローチがあり、それらすべてを紹介すること
    はできない。ここでは、産総研・地質調査総合センターによる地質に基づいた研究
    を通して、巨大地震とは何かを解説していく。産総研のやり方はいわば現場主義と
    言ってよい。地震の起こった現場に行き、さまざまな現象を調査・分析したり、断
    層を掘ってそこに残された地震の証拠を詳しく調べていく。そうした具体的な研究
    例を通して、巨大地震とは何かを少しでも身近なものとして感じとっていただきた
    いと願う。

     地球の表面は、プレートという巨大ないくつもの固い岩板で覆われている(下の図)。
    そして日本列島はユーラシアプレートの東縁に位置している。北からは北米プレー
    トが伸び、北海道と本州中心部分まではその上に乗っている。北米プレートの下に
    は、東からの太平洋プレート、南からのフィリピン海プレートが沈み込んでいる。
    これらのプレートが年間約一〇cm程度の速度で動き、押し合いへし合いすることで
    日本の国土は形作られてきた。だから、四つあるいは五つのプレートがせめぎ合う
    日本では、地震はごくごく身近な自然現象なのだ(次ページの図)。
     地震は、大ざっぱに二種類に分けられる。「海溝型地震」と「内陸型地震」である。
     東海地震のモデルとしてよく知られている「海溝型地震」は、プレートの境界で発生す
    る。ゆっくり沈み込んでいくプレート同士の歪みが解放されるときに地震が発生す
    る。プレート境界で起こる地震は一〇〇年程度の間隔で繰り返す。また、沈み込ん
    だプレート内部でも、押されたり曲げられたりすることによって地震が発生するこ
    ともある。
     いっぽう一九九五年一月の阪神・淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震(M七・三)
    は内陸型地震で、「六甲・淡路島断層帯」の活動によって発生した断層帯のなかの
    一つ「野島断層」では顕著な右横ずれが地表で見られた。これはいわゆる活断層が
    動くことによって発生する地震である。活断層とは、最近の地質時代(おおむね数
    十万年前以降)に活動をした証拠があり、今後も活動を繰り返す可能性の高い断層
    のことだ。内陸型地震は地盤がズレることによって発生するが、いつもだいたい同
    じ場所でズレる。それが断層だ。二〇〇四年一〇月二三日に起きた新潟県中越地震
    も内陸型地震である。内陸型地震は、おおよそ一〇〇〇年以上の間隔で発生すると
    考えられている。
     プレートの境界面は均一ではなく、不均一になっていると考えられている。がっちりと
    固着している領域と安定してズルズルとすべっている領域があるらしい。地震では
    「アスペリティ」と呼ばれる領域単位ですべりが発生すると考えられている(アス
    ペリティという言葉の意味は、物質表面のザラザラ感や凹凸のこと)。アスペリテ
    ィは、普段はがっちりと固着しているのだが、いったんすべり始めると一気にすべ
    って蓄積された力を解放する領域だ。現在は、この概念を中心に海溝型地震が理解
    されようとしている。
     地震波、つまり地震によって発生して伝わっていく振動を解析することによって、断層
    面がどのように動いたのかといったことを調べるのが地震研究の主流だと言ってよ
    い。しかしそれだけでなく、地震をめぐる研究は地質学、地形学、地球科学、地球
    物理学、地震工学などさまざまな分野で行われている。また、大学のほか、気象庁
    、防災科学技術研究所、建築研究所、土木研究所、国土地理院などさまざまな研究
    機関で行われている。研究アプローチもいろいろだ。
     阪神・淡路大震災発生以降、活断層に対する注目が年々高まっている。独立行政法人
    産業技術総合研究所(産総研)地質調査総合センターでは、実際に地面を掘って断
    層を調べるトレンチ掘削やボーリング調査など、さまざまな手法を使い、活断層の
    場所を特定し、それが引き起こす地震規模の推定、将来の活動予測などを行ってい
    る。
     産総研の地震研究アプローチの特徴は、地質に基づいたものであるという点だ。「地質
    に基づく」とは、古文書などの歴史記録に加え、地層や地形に残された記録から過
    去の地震活動を推し量り、それによって今後の予測を試みようという意味である。
     地震が発生すると、断層ができたり、広域の地殻変動が生じたり、また、結果として、
    津波が起こったり地下水が変動したりする。そうした観察・観測可能な現象から、
    逆に遡って地震の実体に迫ろうというのが産総研のアプローチである。
     こうしたアプローチの利点は、現在起きている出来事だけでなく、長い地質時代を通し
    て起きた過去の地震の履歴を解き明かし、研究の対象にできるところ。地層の中に
    は、古い時代の記録が埋め込まれている。過去は現在を読み解くカギである。過去
    に起きて地層に記録されている現象を読み解くことで、現在、そして未来に起きる
    出来事を予測することができる。
     また、幅広い研究分野をカバーすると同時に、得られた知識を実社会にどのように応用
    するかを視野に入れている点も産総研の研究の特徴である。

     産総研・地質調査総合センターについてもう少し紹介すると、ここは二〇〇一年に行わ
    れた中央省庁改編に伴って誕生した組織の一つである。前身は一八八二年(明治一
    五年)に設立された「地質調査所」。二〇〇一年に工業技術院傘下にあった一五の
    研究所が独立行政法人産業技術総合研究所として統合されたおりに誕生した。現在
    は、「地質情報研究部門」「地圏資源環境研究部門」の二研究部門、「深部地質環
    境研究センター」「活断層研究センター」の二研究センター、および地質標本館や
    地質調査情報センターなどの関連部門から構成されている。
     本書に関わったのは、主に地質情報研究部門と活断層研究センターの研究者たちである。
    普段接することのない研究者たちの考え方とともに、時間的にも空間的にも広がり
    のある、地震研究の持つパースペクティブを感じてもらえれば幸いである。そして、
    「巨大地震とは何か」をきちんと理解していただきたいと思う。
     地震そのものは一瞬の出来事だが、その背景には長い長い時間の流れがある。時間的空
    間的にも地質学的スケールの広がりをもった流れのなかで起きる現象だ。地層に埋
    め込まれた大昔に起きた地震も、現在の私たちと決して無関係ではない。訓練され
    た研究者たちには、トレーニングを積んでいない一般人とはまた違った風景が見え
    ている。その風景を垣間見てほしい。
     同時に、地震研究というサイエンスに対してどのような距離感で望むべきなのか、読者
    自身の立ち位置を考えてもらえれば幸いである。地震予測を望む人は多いと思うが、
    地質学・地震学に限らず、科学には本質的に限界がある。
     また、地質学は本質的に経験科学であり、歴史科学としての宿命を良くも悪くも背負っ
    ている。時間をかけてデータを蓄積する必要があるいっぽうで、地震のスケールは
    人間あるいは文明のスケールに比べるとあまりに長く、近代的観測が始まって一〇
    〇年が経過した現代に至ってもなお、科学はまだ地震に対して十分な経験を積んで
    いない。そこに地震研究の本質的な難しさがある。それが科学の現状であることを
    理解していただくとともに、それが常に前進していることを実感していただけると
    ありがたいと思う。
     本書の構成は二部形式となっている。第一部は、より多くの一般読者に巨大地震に対す
    る理解を深めていただくことをめざして、研究者自身へのインタビューをまとめる
    形式をとった。それぞれの研究テーマの大筋や位置づけとともに、研究者がどんな
    ことを考え、どんなモチベーションを持って研究活動に従事しているのか、多少な
    りとも知っていただけるだろう。そして第二部では、これらの内容に立って、最新
    の研究内容をより掘り下げて理解していただくよう、研究者自身が筆をとった。
     日本に住む以上、地震との縁は切れない。来るべき巨大地震への備えを怠ってはいけな
    いが、無闇に恐れることは百害あって一利なしともいえる。地震という自然の力に
    対して私たちが冷静な判断をくだして行動するための力強い武器、それが知識であ
    ると信じている。

    二〇〇六年八月
                                         著者 


    産総研ブックスについて




    産総研ブックスについて  科学技術力の向上は人類が抱える諸問題の解決に必要不可欠である。そのための研究は、
    知識の獲得だけでなく、産業を通じて技術をどのように社会に役立たせるかという
    側面が重要になる。このような背景のもと、平成一三年四月、「社会のための科学
    技術を生み出す創造的研究者集団」としての独立行政法人産業技術総合研究所(産
    総研)が誕生した。
     産総研は、先端技術による産業競争力強化と新産業創出、国が自ら取り組むべき困難で
    長期的な課題の解決、産業技術を支える知的基盤整備という三つのミッションを担
    い、総合的な研究活動を進めている。
     具体的には、知識の発見・解明をめざす基礎研究(第一種基礎研究)、異なる分野の知
    識を幅広く選択、融合・適用する基礎研究(第二種基礎研究)、そして直接社会に
    利用される技術への開発研究(製品化研究)、といった三つの段階を、第二種基礎
    研究を軸として連続的に行う研究方法を「本格研究」として提案し、実施してきた。
    第二種の「基礎研究」と呼ぶのは、得られた結果を普遍的なかたちで科学的に記述
    することにより、後に続く研究者に有効に利用され、使用知識の体系化がなされる
    ことを意識しているからである。
     産総研での研究は、ライフサイエンス、情報通信・エレクトロニクス、ナノテクノロジ
    ー・材料・製造、環境・エネルギー、地質、標準・計測、など、その分野は多岐に
    わたる。
     「産総研ブックス」の刊行にあたっては、世界水準の個々の研究の最前線を伝えるとと
    もに、研究の意義や将来性、あるいは社会や産業とのかかわりについても紹介する
    ことを強く心がけた。科学技術とくに産業技術の重要性が広く深く日本社会に認識
    されることを願う。

    独立行政法人 産業技術総合研究所













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