かけがえのないもの

●養老孟司著 ●定価(本体700円+税)  

読むと勇気がわいてくる、養老教授のまともな人間論


自然、田舎、身体がなぜ大事か。
子どもの本当の財産とは何か。




養老孟司著   著者紹介
かけがえのないもの   
     目次
     あとがき
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自然、田舎、身体がなぜ大事か。
子どもの本当の財産とは何か。
読むと勇気がわいてくる
養老教授のまともな人間論。


  • 新書判  並製
  • 200ページ
  • 定価(本体700円+税)

  • ■著者紹介

    著者 養老孟司(ようろう・たけし)
    東京大学名誉教授。専門は解剖学。一九三七年鎌倉市生まれ。
    一九六二年東京大学医学部卒業。九五年に東京大学医学部教授を退官。
    『唯脳論』(青土社)、『臨床哲学』(哲学書房)、『日本人の身体観の歴史』(法蔵館)、
    『人間科学』(筑摩書房)などを通し、わが国の学問や思想に大きな影響を与えてきた。
    さらに、『脳と自然と日本』『手入れ文化と日本』(ともに白日社)、
    『バカの壁』『死の壁』(ともに新潮新書)、『からだを読む』(ちくま新書)、
    『まともな人』(中公新書)、『いちばん大事なこと』(集英社新書)を通して、
    ものごとを考える規範を日本人に提供し続けている。




    ■目次




    『かけがえのないもの』目次

    第一章 自分のことがわからない――11 前提は生きていること / パイロットの才能の見つけ方 / ダーウィンとミミズ
    / 長嶋流の物理学 / 何億年もかけて受け継がれてきたもの / 運動ができること、
    運動を調べること / ヨコ型の西洋、タテ型の日本
    第二章 人間の構造――23
    動く構造 / 機械としての構造 / ピアノと聴覚細胞 / 機能としての構造
    / 機能と枠組み / 個体発生による説明 / 歴史的な説明 / 情報による構造の説明
    / 脳という情報系統 / 目が構造をつくりだす / 自然のものと人工のもの
    / 意識と無意識 / 心と身体の折り合い
    第三章 かけがえのない未来――41
    未来を食う社会 / 時間泥棒 / 不幸な契約 / 子どもの財産 / 手入れという思想
    / 手入れのコツ / 無意味な質問 / 生老病死をなぜ嫌う / アメリカも日本も同じ
    / 不安の違い / 覚悟と死語 / みずから選びとる人生
    第四章 わけられない自然――61
    言葉が自然を切り分ける / 男と女 / 男とも女ともいえない性
    / 社会的な性、社会的な死 / 考えない前提 / 男性社会の起源 / 人間の自然性
    第五章 かけがえのない身体――75
    人工身体と自然の身体 / 暴力はなぜ禁止されるのか / 脳が現実を決める
    / 国体という言葉 / いろいろな現実 / 脳は機能の共有 / 社会というものの定義
    / 唯一客観的な現実があるという信仰 / 身体の現実 /
    中世人の鋭い目 / 脳化した江戸時代 / 尺度としての脳 / 自然の身体を取り戻す
    第六章 からだは表現である――97 その人がその人であるところのもの / 死体は身体の典型 / 生と死を明確に切る文化
    / 塩をまく習慣 / いないことになっている子ども / らい予防法のこと
    / 数字に化けた透明な身体 / 正常値と異常値 / アタマは平均を外れろ、身体は平均に寄れ
    / 血圧三〇〇?の東大生 / 置き換え可能な身体 / 健康保険の論理
    / かけがえのない自然の身体 / ケアとキュア / 都市化と人工身体
    / 裸が許されない理由 / 都市の平和 / 「首から上」「首から下」
    / 型と文武両道 / 無意識の表現 / 以身伝心 / マスコミと軍隊 / 身体の意味
    第七章 自然と人間の共鳴――129
    人間がモノに見えるか / 胎児の大きさ / ホラー映画の世界 / 二人称と三人称の死体
    / 死者の人権 / 人工物は名前が変わる / 人間の尺度、自然の尺度
    / 荻生徂徠と二宮尊徳 / 宗教の役割 / 黄河をつくった中国人
    / 豊かな自然と日本の文化 / 人間と自然の共鳴
    第八章 かけがえのない自然――149
    頭上を舞うチョウ / 山林の種類 / 手入れと里山 / 一周遅れのマラソンランナー
    / カニやホタル / サツマイモとカボチャ / 子どものものを削り取る
    / 都市化と銀座 / 都市の約束事 / 子どもという自然 / セリエの遺言
    / お墓に持っていけるもの / 奨学金の矛盾 / 過去を否定してはならない
    終章 意識からの脱出――171
    GNPではなくGNH(ハッピネス=幸福) / 暗黙のルール / 外は異境異界
    / 鎌倉時代の人の自然 / 古代宮廷人は現代人 / 自然と共存する仏教
    / 昆虫の合目的的行動 / ノイローゼになる人間 / ゴキブリと近代文明
    / 予定通りにならない人生 / 手帳に書かれた現在 / 未来の素晴らしさ
    / 無意識という大きな世界 / 死語の背景 / ブータンと日本の交換留学
    / 意識からの脱出
    あとがき――195




    ■プロローグ




    あとがき



     あとがき  この本の内容は、ここ十年ほどあちこちで講演した話を集めて、白日社でまとめて くれたものである。私の本をすでに読んでくださっている読者は、同じことをいって いるとおわかりであろう。それは当然で、私が考えていることだからである。  まとめなおして読んでみると、自分でも話が同じだと思う。別な表現をすれば、一 貫しているということでもある。現代社会が意識の世界であり、それは都市化だとい うこと、それに対して身体をどうするか、それは実行の問題だということ、その種の 「あたりまえ」を私はひたすら説いてきたように思う。  いまでもよく講演をする。「そういう見方もあるかと思いました」。私の講演を聞 いた人がよくこういう感想をいう。それならその人は、これまでどういう見方をして いたのだろうか。  私は自分の著作を自分の頭の整理だという。自分の頭なら、自分で本を書きながら 整理できるが、他人の頭の整理はできない。それはそれぞれの個人がするしかない。 そこがだんだん心もとなく思われてきた。  そうかといって、俺のいうことが正しい、俺のいうことを聞け。そんなことをいう 気はない。私は政治が嫌いだが、それは政治にはしばしばそれが出るからである。自 分は正しい、あいつは間違っている。だから戦争をして、相手を殺す。規模は小さい が、テロもそれに似ている。そこで次にはテロ反対と称して、もっと大規模に人を殺 す。じつは正気の沙汰とは思えないが、それを人間はあえてする。それには裏の理由 があるはずである。  それを追求するのが学問だと思うが、私が知っていた学問は、論文を書くことに専 念する世界だった。それはそれで間違っていない。しかし、間違ってないことだけを 自分がしていても、世の中全体が間違ってしまうこともある。世の中全体が間違って いるときに、自分は正しいことをしていますというのも、変なものである。そんなふ うに思っているうちに、講演をし、本を書くという生活になってしまった。  それが理想かというなら、とんでもない。この本でも述べたことだが、人生の基本 は自然で、それなら虫捕りが私の性に合っている。山の中をウロウロ歩き回って、適 当に虫を拾っていれば、それで満足なのである。ところが世の中は、虫を捕るように はできていない。そんなことをしたって、それこそ一文にもならない。そんなことな ら、子供の頃からよく心得ている。虫捕りにかまけて、試験勉強をしないと、親にも 先生にも叱られる。その癖がきちんとついているから、還暦を過ぎても、つい試験勉 強だけはする。それがこういう本になる。  このところ自分の本がいろいろ出すぎたから、自分でももう見たくない。かなり前 から白日社がゲラを用意してくれたのだが、読みたくないのである。頭の整理はもう 済んで、それをすでに吐き出して、中身はすでに空である。やっとの思いで読み直し て、わずかに訂正して、こうなった。私の考えがかいつまんでまとめてあるから、私 がなにを考えているか、全体の概略を知りたい人には便利かもしれない。主題は自然 と人工、つまり田舎と都会、個人でいうなら頭とからだ、つまり心と身体である。  「そんな見方もありましたか」。そういう感想をいってくださった方には、本当に 感謝している。でもさらに本音をいうなら、そうでない見方って、どんな見方か、ち ょっと出してみてよ、といいたいのである。大づかみで世界や人間の概略を書く。 それは日本の人は苦手らしい。うっかり書くと、大風呂敷だといわれる。  過去の政治家でそういわれたのは、後藤新平である。とくに女性に申し上げたい。 日本女性の平均寿命が延びだしたのは、統計によれば大正八、九年ころからだという。 元建設省河川局長の竹村公太郎氏が詳しいデータを示しておられる。寿命が延びた 理由はなにか。大風呂敷といわれた後藤新平が、まず東京都から水道の塩素消毒を始 めたからである。以後、女性の寿命はひたすら延びっぱなしである。  なにがいいたいか。女性は後藤新平の銅像を建てたか、である。それだけ大きな業 績でも、知らなければわからない。「原始、女性は太陽であった」かもしれないが、 日本女性の寿命を延ばしたのは、まず後藤新平である。そんなこと、学校では教えて くれない。自分でものを考えることを、一人でも多くの読者がしてくださるようにな れば、それは著者の望外の幸福である。                                  養老孟司  二〇〇四年七月






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